クラスではこんな内容を学びます
資本主義の下で、労働者は、貧困・失業・重労働に対抗する必要に迫られ、団結し運動を発展させます。しかしこれらは、資本家の利益を減少させるものです。資本家たちは、自分たちの利益のために、団結して労働運動に対抗します
当初、労働運動には、暴力を用いた弾圧が利用されます。やがて、資本主義が発達し、労働者人口が増え、労働者の社会的な団結が高まり、労働運動が暴力では抑圧しきれないことが分かると、労働運動指導部を買収・懐柔して労働運動を変質化させる、協調的な労使関係を作り出します。
第二次世界大戦後、労使の力関係は急激に変化します。ドイツや日本では、戦争協力した財界は力を弱め、抑圧されていた労働運動は合法化され急速に力を持つようになりました。資本家の一方的な支配が困難になり、財界は労働運動の中心部分を味方につけて、資本の蓄積に協力する関係作りを目指して新しい関係(「モデル・ドイツ」や「日本的経営」)を作り出しました。この関係を財界は、コストはかかるが良好な労使関係のためには必要な「聖域」としてきました。
しかし、1989年のベルリンの壁の崩壊から始まる新たなグローバル化は、世界の労使の力関係を再び大きく変化させました。国際化する競争の中で、財界の力が強まり、世界の労働運動は弱体化を余儀なくされました。中でも日本は深刻な状況にあります。
講座では、今日の社会で労働組合が働く者の味方になっていない理由、日本の労働者が企業社会に縛られてしまう理由、グローバル化が世界の労働運動の弱体化を生み出した理由を説明し、そのような状況の中にあっても労働者の運動が強まりつつある理由について解説します。
こんな方におすすめします
- 日本のブラックな企業社会が生み出される理由を知りたい方。
- 日本の労働組合運動がぱっとしない理由が知りたい方。
- 労働組合がどうして財界の政策に協調するのか知りたい方。
- グローバル化の下で、働く人々が深刻な経済状況になっている理由を知りたい方。
- 日本とドイツとを比較して、日本の労働運動に足りないもの学びたい方。 0
カリキュラム
【コース制】 毎月 第2土曜日 10:00〜12:00
【教室】 Zoom会議を利用したリモート講義
【テキスト】朝日吉太郎著『現代資本主義と資本・賃労働関係—日独比較を通じて—』文理閣、2022年
【予定】
第 9回講義 7月12日(土) 第2部第4章〜
第10回講義 8月12日(土)
第11回講義 9月 9日(土)
第12回講義 10月14日(土)
第13回講義 11月11日(土)
第14回講義 12月 9日(土)
『現代資本主義と資本・賃労働関係』学習会 (Zoom教室)
頑張っても豊かになれない
働く人々はだれでも、文化的でゆとりのある生活ができる所得を得ること、働きがいがあり健康を維持できる労働環境の下で働くことを願っています。ところが、働く人々の所得や職場の現状は人々が望むものにはなっていません。そうならないのはなぜでしょうか。そうなるためには何を変える必要があるのでしょうか。
労資関係は利害関係
資本主義の下で、労働者は、他の労働者と自分とが同じ境遇であることを理解し、自分たちの状況改善のために団結し労働運動を発展させていきます。その成果は、労働時間短縮、賃金上昇、労働強度の軽減などですが、これらは、資本家の利益である剰余価値(利潤の源泉)を減少させるものです。
労働者の団結と資本家の団結
自分たちの利益を損なわれないようにと、資本家たちは団結して、労働運動に対抗しようとしていきます。資本家たちは、当初、労働運動の弱体化をはかるために、直接的な暴力を用いた弾圧をおこないますが、やがて、労働運動が暴力では抑圧しきれないことが分かると方針を変更します。
労働運動抑圧方法の変化
例えば、労働運動指導部を買収・懐柔して労働運動を変質化させる、労働市場の分断化、パート労働者など不安定な就業層を利用する等を通じて特権的な労働者の企業への依存性を高める様々な優遇をおこなうこと、労働運動を認めることで労働運動を体制内化すること、労働運動組織内にインフォーマルな組織を作ったり、資本家にフレンドリーな組合を作り、それに批判的な労働者を労働組合などの労働者利益代表組織から排除するなどなど、その方策はさまざまな姿で現れます。
第二次世界大戦後の労資の力関係の新たな均衡
第二次世界大戦後は、それぞれの国で労資の力が急激に変化したため、戦前とはちがう新たな力関係の均衡が生まれました。ドイツや日本でも、戦争に協力したことが批判され力を弱めていた資本家と、戦後に急速に活性化した労働者との間で、戦後労資関係の新たな均衡が作られます。資本家の一方的な支配に代わって、労働運動を容認し、労働運動の中心的な労働者層を優遇することで、資本の蓄積に協力する関係が作られました。資本家階級はその力関係を「モデル・ドイツ」「日本的経営」といった「聖域」として、コストはかかるが資本主義には必要とされる制度だとしてきました。
グローバル化と労資の力関係の均衡をめぐる新たな攻防
しかし、1989年のベルリンの壁の崩壊は、世界の労資の力関係を大きく資本家に有利なものに変化させました。その結果、資本家はこれまでの「聖域」に踏み込み新たな力関係の均衡を作るための攻勢を始めました。こうして、メガ・コンペティション(世界規模での大競争)を理由に、グローバル時代に適合した新自由主義的な労資関係がめざされるようになりました。その結果、世界の労働運動は労働市場の規制力を低下させ、勢力の弱体化を余儀なくされました。