9月の開講講義
【経済学】『資本論』学習会は10月再開です。
ソシラボ『資本論』学習会では、K.マルクス『資本論』第1巻の講義をおこなっています。。
ほぼ1年間続けてきた『資本論』の講座ですが、8月で修了しました。
では、『資本論』とはどんな書物なのでしょうか?
1 『資本論』は資本主義社会の仕組みと運動の基礎法則を解明した書物
私たちが暮らす社会では、人々は活発に運動し、日々発展をしています。
人々は暮らすために、生産と消費をするわけですが、その生産のあり方で社会の構造や文化が大きく違ったものになります。
社会の特徴は、その社会を構成している人々によって形作られます。古典古代の奴隷制度のものでは、富を持つ人は奴隷主となり、富をもたず人間として扱われない奴隷達が使役され、奴隷は自ら生産した者の内、多くを奴隷主に捧げなければなりませんでした。
封建時代になると、生産性の低い奴隷制度に変わって、小農民が自分の菜園や道具を持ち、自分のために働く条件がつくられます。しかし、大部分の土地は封建貴族のものであり、土地所有者である封建貴族は、自分の領地で小農が働くく権利を与える代わりに、労働や年貢や金銭などの封建地代を納めさせていました。
資本主義社会は、封建社会の中から封建的な社会制度を打ち破って、市民のための社会が作られたように見えますが、身分制度はなくなったものの、貧富の差が生まれ広がる社会であることは変わりませんでした。
資本主義社会では、工場や道具や原料といった生産手段を持つ資本家が、生産手段を持たず生きるためには自分の働く能力を商品として売らざるをえない賃労働者を雇い使役します。それはボランティアのためではなく、利潤を得るためです。投下した価値以上の価値が作られるとその差額が利益になります。だから、賃労働者は自分の賃金以上の価値を作り、それを受け取ること無く資本がそれを受け取ります。こうして、自分の生活の再生産費をこえる価値部分を資本家が取得することで、資本の利益が生まれます。
これが資本主義の法則であることを発見したのがマルクスです。
資本がより大きな利益を上げるための基本的な手段は大きくいって3通りです。
① 労働が価値を生み出すので、賃金分の価値を超えて、より長い時間働かせる。
② 労働者の賃金を構成している諸商品の価値を下げて、労働者が賃金分の価値をつくるために必要な労働時間を短縮し、短縮した分の労働時間で生まれる価値を資本家が自分のものにする。
③ 労働の強度を高め、通常の労働時間で生みだされるより多くの価値をうみださせる。
つまり、長時間、過密、低賃金こそが、その基本だということです。
そのために資本は様々なイノベーションや蓄積を進めて行きます。
それらの結果は、労働時間の延長、賃金の抑制、熟練が解体されて失業したりて雇用が不安定化し、資本家の立場が強まり労働者の従属度が高まるなど労働者の状態が悪化する要因になります。
こうして労働者の所得を抑制することで利潤を拡大していこうとすると、今度は生産されたものを購入するための社会的消費力がスムーズに発展しないで、生産と消費、供給と需要のバランスが崩れます。この結果を、強制的に正常にしようとするのが、恐慌です。
労働者は貧困を生み出し自分を支配する資本家の富を自分で作り出していることになります。自分たちが作って自分たちに支払われなかった富を自分たちに取り戻し、皆で作り皆で分けるようにすれば、このような社会的問題が解決されます。そのためには資本家のものとなっている生産手段を共有化することが条件になります。
このような主張を社会主義、共産主義と言います。
マルクスの『資本論』は社会主義・共産主義を説明することが目的では無く、リアルな資本主義を認識することこそが資本主義社会の諸問題に苦しむ賃労働者の自己解放の手段となることを意識して書かれた本です。
マルクスが生きた時代からは、もう1世紀半以上が過ぎました。当時の社会と比べて今日の社会は発達しており、資本論が全てを解明している訳ではないのですが、今日の社会の深部にある法則は、やはり資本主義であるという特徴を持っています。
今日の社会の格差、貧困や抑圧といった社会問題を考えるために社会の構造と運動を理解することが、大きな参考になると思います。
9月の『資本論学習会』はお休みです。
次回『資本論』学習会の新クールの開催は、10月9日(水)20時30分から
10月9日(水)から、第5クールの『資本論』学習会を始めます。
内容は、これまで同様、『資本論』第1巻の学習です。
最新の訳の新日本出版社の『新版 資本論』の1〜4をテキストとします。
学習会の回数は、過去の経験で、概ね隔週24回1年間で終了します。
講義 : 月二回 (休祝日などで、調整をすることがあります)
受講料: 社会人は一月2000円
学生、高齢者、障害者などの経済的理由がある場合には、月1000円(税込)が講義料です。
【哲学】古典読書会2は、『フォイエルバッハ論』を開講中です。
古典読書会(火)は、20時~21時から隔週(火曜日)で、エンゲルスの『フォイエルバッハ論』の読書会を開催します。
近代哲学の発展はヘーゲルの哲学で頂点に達しますが、それらの哲学は、世界の根源を神やイデー(絶対的精神)といった神秘的なものと考える観念論でした。観念論を批判して、物質や運動が根源であるという唯物論を唱えたのがフォイエルバッハです。近代の資本主義と科学技術の発達の中で観念論の前提となる認識が次々と覆されている中で、その発展は必然性をもっていたわけですが、フォイエルバッハの主張にも非合理性があり、なりよりも世界が変化のなかにあることをとらえら弁証法についての認識不足がありました。
マルクスやエンゲルスは、この弱点を克服するために、弁証法的唯物論の見地に到達し、世界の神秘性を払拭するとともに、自然会や人間界が合理的に発展する法則を解明します。その葛藤を体験しながら、ものの見方、考え方の基礎を検討します。
8月の読書会は、8/13、8/27の20時〜21時に開催予定です。
【哲学】古典読書会(水)『反デューリング論』
古典読書会(水)では、エンゲルス『反デューリング論』が始まりました。。
テキストは、エンゲルスの『反デューリング論』秋間実訳、新日本出版社です。
19世紀、ドイツでは資本主義が急速に発展するにつれ資本主義が生み出す社会的矛盾が労働運動の発達を生み出していました。様々な科学的発見や産業の発達の中で、労働者は労働運動を発展させ社会を変革するために、社会法則の認識や自然法則の認識をすすめる必要に迫られます。様々な思想的立場をもった集団によって形成されていた労働者政党「社会民主党」の中でも、次第に科学的社会主義の立場に立つマルクスの影響が浸透していきます。
そんな中でベルリン大学の講師であったオイゲン・デューリングは、社会主義運動に接近して労働者政党である社会民主党に一定の影響力をもつようになります。デューリングの主張は、社会改良的な内容を持つだけでなく、ダーウィンの進化論の批判、科学的社会主義以前のユートピア社会主義者や社会運動の否定など、マルクスの科学的社会主義に反対するものでした。
エンゲルスは、デューリングの主張の非科学性を明らかにするために、デューリングが取り扱った様々な科学領域について、批判的解明をおこなうことになります。そのため、本書の内容は、哲学、自然科学および社会科学の諸領域におよび、それぞれの領域において重要な内容について、科学的社会主義の立場からの解明をおこなうことになりました。科学的社会主義の理解をすすめるうえで重要な指針となる著作を検討していきたいと思います。
8月は 8/28(水)20時30分〜22時、開催予定です。
『現代資本主義と資本・賃労働関係』学習会
ドイツの金属労組(IG Metall)の最低賃金の上昇を要求するデモンストレーション 2024年
ソシラボ『現代資本主義と資本・賃労働関係』学習会では、第2次世界大戦以降の現代資本主義における資本・賃労働関係について学習します。
労働者の利益を守るはずの労働組合が、財界とフレンドリーに、賃上げや処遇改善といった労働者の要求に背を向け、活動的な労働者に対して企業といったいとなってハラスメントを行うといったことは希ではありません。また、これは日本だけの現象ではなく、世界中でみられることです。
特に、日本は長時間、過密、低賃金状態であり、ブラック企業・カローシといった言葉が海外で通用するようなとんでもない状況にあります。そのような社会現象が生じる理由を法則的にとらえます。
ドイツ語講座
アーヘン市役所
ドイツ語講座は、に、ドイツの新聞・雑誌やその他メディアから文章を取り出して生きたドイツ語を読み解く内容になりました。
実際の記事などを読み解くのはなかなか大変ですが、頑張れば力がついてきそうです。
これまでは、
小話のジョーク
イタリアへのチュニジアからの不法移民にたいするEUやイタリア政府についての報道記事
ドイツの東西における難民受入についての世論の変化
ヨーロッパ統合の歴史的文書
に関する文章をとりあげてきました。
3月半ばからは、Erinnerung von Professor Steinberg 1939 – 1945 を採りあげ、第2次世界大戦の最中、ポーランドのダンツィヒで育ったシュタインベルク教授の体験をもとに、ナチスの占領、ソビエト軍の侵攻などの体験談を採りあげます。
ダンツィヒは、中世の自由都市でしたが、近代はプロイセンの中の自由都市として存在していました。第1次世界大戦後の戦後処理の中で、プロイセンにかわってポーランド王国領の中の自由都市国家として存在することになるのですが、当時は98%がドイツ人、2%がユダヤ人という国でした。1939年9月1日、ヒトラーが率いるナチ国家ドイツは、ポーランドと開戦し、まっさきにダンツィヒの町を占領します。
子供であったシュタインベルク教授は、ユダヤ人が強制連行されていくこと、自分の出産を手助けしたユダヤ人医師がユダヤ人のみを診るように受診者を制限され、その地にいられなくなることなどを、体験していきます。
終戦までそこで何が行われたか、自分の体験にもとづいた話が、リアルに語られます。
日時 隔週日曜日の10時30分〜12時 ※
9月は、9/1日(日)、9/29(日)は10時30分〜12時です。
会場 鹿児島市勤労者交流センター(中央駅前のイーオン7階よかセンター)や、その他の公共施設で開催します。
関連文献のご紹介
ところで、1989年のベルリンの壁崩壊以降のグローバル化とは何かについて解説したのが、朝日吉太郎編著『グローバル化とドイツ経済・社会システムの新展開』文理閣、2003年です。現在の欧州のグローバル化については朝日吉太郎編著『欧州グローバル化の新展開』文理閣、2015年が参考になります。コロナ禍・ウクライナ紛争など2020年代の欧州のグローバル化については、著作を計画中です。
2024年9月の時間割
料金一覧
講座名 | 社会人 (1回:税込み) | 学生・高齢者・その他 (1回:税込) |
『資本論』学習会 | 1000円(月2000円) | 500円(月1000円) |
古典読書会1エンゲルス『反デューリング論』 | 1000円(月2000円) | 500円(月1000円) |
古典読書会2エンゲルス『フォイエルバッハ論』 | 1000円(月2000円) | 500円(月1000円) |
朝日吉太郎『現代資本主義と資本・賃労働関係』読書会 | 1000円(月1000円) | 500円(月500円) |
ドイツ語講座 | 2000円(月4000円) | 1000円(月2000円) |
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