5月の開講講義
資本論学習会
古典読書会2『空想から科学へ』
ソシラボ『資本論』学習会では、K.マルクス『資本論』第1巻の講義をおこなっています。。
5月は、第1巻の第15章労働力の労賃への転化を検討します。ここでは賃金の秘密が明らかになります。
世界中の圧倒的多数の人は、賃金とは労働に対する報酬だと思っていますが、実はそれは間違いです。
だれもが「えっ!!」と驚く内容ですね。
賃金とは、実は労働力の再生産費(生活費)で、賃金の支払制度によって、働く時間や働いた量(出来高)に比例して支払われる制度ができたので、賃金は労働の報酬に見えるのです。
そして、賃金は労働への報酬だと考えるその考えに従うと、説明できないことが生じます。
労働者が労働で生み出した価値と等しい価値が賃金として支払われると資本家は賃金を回収しただけに終わり、儲けを得ることはできなくなります。そうすると投資がなされなくなり、資本主義という社会は成り立たなくなってしまいます。つまり、「賃金は労働の報酬だ」という主張は、あり得ないことを言っているのです。
実際は、一日の労働は賃金と同じだけの価値を回収するために必要な労働時間と、それを超えて資本家の手元に残る剰余労働時間からなり立っています。賃金が労働の報酬であるという外観は、そのことを見えなくし、資本のもうけが労働者からの搾取によってなりたっていることを覆い隠す作用をもっているわけです。
賃金はその制度により時間賃銀や出来高賃金で支払われます。巷の経営学のテキストなどでは、時間賃銀では時間の管理ができるが、出来高賃金では、品質管理までおこなわれるといった表面的な説明にとどまることが少なくありません。
賃金制度の違いによって、労働者が被る影響の違いや、パートやアルバイトなどの不安定就業が生み出される背景にまで迫ります。
講義はレジュメを使った講義方式で行います。
5月は、5/15(水)、5/29(水)、20時30分〜22時に開講予定です。
ソシラボ古典読書会2の5月の読書会では、F. エンゲルスの『空想から科学へ』の「英語版への特別の序文」を教材に、エンゲルスが英国の読者向けに書いた序文を検討します。
19世のイギリスは、中流層の「頑迷な宗教的態度」とそれには批判的ではあるものの、徹底的な唯物論(この世界の本源は神とか精神といった神秘的なものではなく、物質やその運動にあるという考え)の立場に立ちきれない「不可知論(ものごとの真の姿を人間は理解出来るかどうかわからないという考え方)」が大きな影響を持っていました。
イギリス人にとって、あまり馴染みがなくヨーロッパ大陸的な考え方かな、と、違和感をもたれがちな唯物論について、エンゲルスは、その考えはもともと近代イギリスで生まれた経験主義から発達し、フランスやドイツで唯物論へと発展したものであることを伝えます。さらに不可知論自体の問題点を示して、弁証法的唯物論、私的唯物論の理論の科学性を示しています。
当時の科学的なものの見方、考え方を普及するために、真実を認識するということはどういうことなのか、「不可知論」との対話を通じて考えます。
近代ヨーロッパの精神史としても、ウェーバーの『プロテスタンチズムと資本主義の精神』よりも明確な論理が示されます。
講義では、文献を精読して、みんなで議論してすすめる読書会型の講義です。
5月は5/14と5/28に開催予定です。
<予告>
このテキストが終わると、次は、エンゲルス『フォイエルバッハ論』の講座を予定しています。
近代哲学の発展はヘーゲルの哲学で頂点に達しますが、それらの哲学は、世界の根源を精神やイデーといった神秘的なものと考える観念論でした。観念論を批判して、物質や運動が根源であるという唯物論を唱えたのがフォイエルバッハです。近代の資本主義と科学技術の発達の中で観念論の前提となる認識が次々と覆されている中で、その発展は必然性をもっていたわけですが、フォイエルバッハの主張にも非合理性があり、なりよりも世界が変化のなかにあることをとらえら弁証法についての認識不足がありました。
マルクスやエンゲルスは、この弱点を克服するために、弁証法的唯物論の見地に到達し、世界の神秘性を払拭するとともに、自然会や人間界が合理的に発展する法則を解明します。その葛藤を体験しながら、ものの見方、考え方の基礎を検討します。
古典読書会1『賃金、価格および利潤』
『現代資本主義と資本・賃労働関係』学習会
ソシラボ古典読書会1では、マルクス「賃金、価格および利潤」をとりあげます。同書は、マルクスが国際労働者協会(インターナショナル)でおこなった演説原稿をマルクスの死後に公刊したものです。
当時のインターナショナルは、世界初の国際的労働運動の組織であり、様々な団体が参加し、理論的にも立場でも確立されたものではありませんでした。マルクスの演説内容は、参加者の一人であるウェストンが主張した意見を批判するとともに、科学的社会主義の立場から労働運動を科学的にすすめる指針を与えるものでした。
ウェストンの主張は、「労働者が賃上げしても物価が上がり結局実質賃金が上がらないのだから、運動をするだけムダだ」というもので、今日でもブルジョア経済学者の中には同様の主張をする人もいるようです。
マルクスは、生活必需品部分の高騰が一時的に生じても、その部門に奢侈部門からの資本が流入して、やがて価格が落ち着くことを明らかにします。
それは、逆に賃上げによる利潤低下が奢侈部門の資本家の利潤を減少させることで奢侈部門への需要を減少させ、その結果、生活必需品生産部門へと資本が流出することで、生活必需人生産部門の供給が拡大し、やがて価格は安定し、結局全体として諸商品全体の価値総額は増減せず、ただ資本家の利潤総額が減少し賃金総額が上昇することになります。
こうしてウェストンが主張した「賃上げが労働者にとって無意味だ」という主張は、誤った一部門だけの影響を考え、さらに、長期にわたって何が生じるかということを考えていない謬論であることが明らかになります。『資本論』の読者にとっても応用問題みたいですが、部門間の資本移動や時間の経過と価格の変動をふまえつつ、一時的な価格の変動のみをみるウェストンの狭さをより広い視点から批判しています。
5月は 5/8(水)、5/22(水)、20時30分〜22時開催予定です。
本書の読了後は、E.エンゲルス『反デューリング論』の読書会を検討しています。
ソシラボ『現代資本主義と資本・賃労働関係』学習会では、拙著にもとづいて、第2次世界大戦以降の現代資本主義における資本・賃労働関係について学習します。
労働者の利益を守るはずの労働組合が、財界とフレンドリーに、賃上げや処遇改善といった労働者の要求に背を向け、活動的な労働者に対して企業といったいとなってハラスメントを行うといったことは希ではありません。また、これは日本だけの現象ではなく、世界中でみられることです。
特に、日本は長時間、過密、低賃金状態であり、ブラック企業・カローシといった言葉が海外で通用するようなとんでもない状況にあります。そのような社会現象が生じる理由を法則的にとらえます。
5月の講義は、その最終回になります。本著の第4部「デジタル化と労働の未来」として、ITやAIで変化しつつある仕事のあり方を検討し、ドイツ財界のデジタル化戦略と日本財界のデジタル化戦略を比較するとともに、ドイツ労働運動の対応と日本の労働者にふりかかる事態について検討し、さらに、技術革新がもたらす配給型社会主義に代わる自由消費型の社会主義の可能性についてもお話しします。
※ 5月は5/18(土)に開催します。
次回が最終回です。
受講方法
受講をご希望の方は、こちらから。
ドイツ語講座
アーヘン市役所
ドイツ語講座は、に、ドイツの新聞・雑誌やその他メディアから文章を取り出して生きたドイツ語を読み解く内容になりました。
実際の記事などを読み解くのはなかなか大変ですが、頑張れば力がついてきそうです。
これまでは、
小話のジョーク
イタリアへのチュニジアからの不法移民にたいするEUやイタリア政府についての報道記事
ドイツの東西における難民受入についての世論の変化
ヨーロッパ統合の歴史的文書
に関する文章をとりあげてきました。
3月半ばからは、Erinnerung von Professor Steinberg 1939 – 1945 を採りあげ、第2次世界大戦の最中、ポーランドのダンツィヒで育ったシュタインベルク教授の体験をもとに、ナチスの占領、ソビエト軍の侵攻などの体験談を採りあげます。
ダンツィヒは、中世の自由都市でしたが、近代はプロイセンの中の自由都市として存在していました。第1次世界大戦後の戦後処理の中で、プロイセンにかわってポーランド王国領の中の自由都市国家として存在することになるのですが、当時は98%がドイツ人、2%がユダヤ人という国でした。1939年9月1日、ヒトラーが率いるナチ国家ドイツは、ポーランドと開戦し、まっさきにダンツィヒの町を占領します。
子供であったシュタインベルク教授は、ユダヤ人が強制連行されていくこと、自分の出産を手助けしたユダヤ人医師がユダヤ人のみを診るように受診者を制限され、その地にいられなくなることなどを、体験していきます。
終戦までそこで何が行われたか、自分の体験にもとづいた話が、リアルに語られます。
日時 隔週日曜日の10時30分〜12時00分 ※
5月は、5/12(日)、5/26日(日)は10時30分〜12時です。
会場が下記から変更になる予定です。参加前の確認をお願いします。
会場 鹿児島市勤労者交流センター(中央駅前のイーオン7階よかセンター)や、その他の公共施設で開催します。
受講方法
受講をご希望の方は、こちらから。
関連文献のご紹介
ところで、1989年のベルリンの壁崩壊以降のグローバル化とは何かについて解説したのが、朝日吉太郎編著『グローバル化とドイツ経済・社会システムの新展開』文理閣、2003年です。現在の欧州のグローバル化については朝日吉太郎編著『欧州グローバル化の新展開』文理閣、2015年が参考になります。コロナ禍・ウクライナ紛争など2020年代の欧州のグローバル化については、著作を計画中です。
2024年4月の時間割
料金
講座名 | 社会人(1回:税込み) | 学生・高齢者・その他 |
『資本論』学習会 | 1000円(月2000円) | 500円(月1000円) |
古典読書会1マルクス『賃金・価格・利潤』 | 1000円(月2000円) | 500円(月1000円) |
古典読書会2エンゲルス『空想から科学へ』「英国版への特別序文」 | 1000円(月2000円) | 500円(月1000円) |
朝日吉太郎『現代資本主義と資本・賃労働関係』読書会 | 1000円(月1000円) | 500円(月500円) |
ドイツ語講座 | 2000円(月4000円) | 1000円(月2000円) |
受講予約
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