ドイツの食文化はビールとソーセージだと思っている人が多くいます。ドイツの食品として日本で一般的に売られているのが、そうだからでしょうね。
でも、よく授業や講演などで、私はこう言ってきました。
ドイツ人は、ウィンナ・ソーセージを食べない。
えっ、と思いましたか?
実は、ちょっと奇をてらった言い回しですが、ウィンナ・ソーセージ Wiener Wurstとは、オーストリアの首都ウィーンで作るソーセージという意味になります。
ドイツ国内では、地方毎に作られるソーセージは形も味も独特で、その地方名で呼ばれることが多いのです。例えば、チューリンゲナー・ヴルスト(チューリンゲン州のソーセージ)、レーゲンスブルガー・ヴルスト(レーゲンスブルク市のソーセージ)などなど。フランクフルトで作られるソーセージはフランクフルター・ヴルストということになります。
ところで、フランクフルト・ソーセージというと日本で売られているものと違って、細長いものです。
で、本当のところは、食品の分類上の区別があって、ウィンナー・ソーセージは、羊の腸をつかった詰めもの、フランクフルト・ソーセージは豚の腸をつかった詰めもの、ボロニア・ソーセージは牛の腸をつかった詰め物といった、ソーセージの素材での区別があります。
が、ドイツでは、生産された地方の名称で売られているように思います。単に経験不足かもしれませんが。
ソーセージの色や、焼き方、トッピングなどによって、名前が変わったりします。
たとえが、有名なのが、有名なのがミュンヘンのヴァイス・ヴルスト(白ソーセージ)。煮て食べます。食べる時に、せーセージの腸膜を食べずに中だけを、ナイフとフォークをつかって器用に食べます。これができないと、「ぽっと出」という評価になるようです。
同じく白くても、色ではなくて、地名+品質ソーセージといった名称だったりします。ドレスナー・ブラート・ブルスト(ドレスデンの「焼き」ソーセージ、のように思っていたけど、Bratの語源は、脂肪の少ない豚の挽肉「Brät(ブレート)」のことだそうですーNewsDigest2021年4月11日。だからドレスデンのブラート・ソーセージということになりますね)、カレー粉をトッピングしただけの焼きソーセージ、カリー・ヴルスト(ベルリン)なんてものもあります。ベルリナー・ヴルストと呼ばれることもあるようです。焼きソーセージにカレー粉をかけ小さなパンに挟んで食べる、こういう露天やソーセージを焼きながら練り歩く商人がベルリンの街角に出没します。
そうそう、ありました。Bockwurst(ボックヴルスト)ビール銘柄「ボック」と一緒に食べるソーセージ、ビーア・ヴルスト(ビール・ソーセージ)、ビーア・シンケン(ビール・ハム)。「やっぱり、ドイツ人はビールとソーセージだ!」と、思わせる名前ですね。
レバーを使ったペーストのつめものが、レバー・ヴルスト。ホテルの朝食では、ちいさなチューブに入って出てきます。これをパンに塗って食べると、やみつきになります。少し癖がありますが、それはレバ刺しが好きになるのと同じ事。
ところで、ドイツのソーセージというと「粗挽き」が多いように思われていますが、私のドイツ留学中も、その後のドイツ調査の旅でも、粗挽きソーセージを食したことはなく、ほとんどは細かな練り物風でした。どこから「粗挽き」ということになったのか、調べてみると面白いかもしれませんね。
粗挽きが美味しくないといっているのでは、ありませんよ。
私のおすすめは、チューリンゲン州のソーセージです。山がちの地方が、おいしい肉をつくるのかなあなんて思います。この地域の世界的有名人の赤ずきんちゃんも食べていたのかなあー。
シンケン(ハム)・大きめのスライスされるようなソーセージには、ヤークト・ヴルスト(狩人のソーセージ)というように曰くがある(ドイツ皇帝の狩りのお弁当)名称が付いていたりする場合があるようです。